アジャイル開発現場におけるTips:人の通り道でアピール

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はじめに

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中佐藤です。今回もお客様内のスクラムマスターがやったことです。

何をしたかというと「他の社員が頻繁に通るところにパッケージデザインを掲示」しました。何の意味があるのか、解説していきます。

パッケージデザインとは

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まずパッケージデザインについて補足します。アジャイル開発をしている方は「インセプションデッキ」をご存じの方が多いと思います。知らないという方はアジャイルサムライを読みましょう。

インセプションデッキは「10の質問と課題」で構成されていますが、そのうちのひとつです。自分たちのプロダクトが、もし「箱売り」されて例えば家電量販店の棚に並ぶとしたら、どんなパッケージにする? ということをチームで考えることで、プロダクトの重要な点や優先すべきことを明確にします。目を惹く絵を中心にドンと置いて、周囲にプロダクトのキーワードを並べることが多く、今回もこのやり方です。

パッケージデザイン追加情報

絵を中心にする書き方に加えて、私はパッケージの「裏」もデザインしてみては? とおすすめすることがあります。家電量販店で箱売りのソフトを買うとしたら、まずは「表」を見て箱を手に取る。その後、自分の使っているOSで大丈夫? とか、必要スペックは? とか、より詳細を知るために「裏」を見ます。そこを書くことで、「表」より詳細な部分の理解を全員で合わせることができます。

・・・等という説明をしていたのですが、「ソフトの箱買い」をほぼしなくなって、このメタファーがそろそろ使えなくなりそうです。

どんな場面で使えるか

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対象のチームはできたばかりでした。その会社にとってアジャイル開発も始めたばかり。執務室の片隅で数人でチームを作って開発していました。
知らない人から見ると、奇異に映ったと思います。何やらシステム開発をしているらしい。でもホワイトボードとかパーティションに付箋を貼って頻繁に、時には立ったままミーティングしている。一体何をしているんだ、と。
そのため「私たちはこんなことをしています」とアピールするために、スクラムマスターはパッケージデザインの絵を大きめの紙に印刷して、人が通る通路近くに貼り出しました。

どのように使うか

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このチームでも、スプリントゼロの時にインセプションデッキは一通り作成していました。これをチーム部屋に掲示するのはよくやることですが、その中でもパッと目をひくパッケージデザインをチーム外へのアピールのために使ったのが、大きな特徴です。
また、これは偶然ですが、チームの場所が大きめの会議室のすぐそばで、出入りのために人がよく通る場所だったのです。この場所のメリットをスクラムマスターは見逃しませんでした。

このやり方のいいところは、情報を受ける側に時間的コストがかからないことです。その傍を通りかかる人から見れば、何か貼ってあるな、と目の端に止まるだけ。そのプロジェクトのことを知っている人には、ああ、あの開発、ここでやっているのか、と認知してもらえます。新たにできたチームの「得体の知れなさ」がこれだけで緩和されるのです。

これはスクラムで言う「透明性」、とりわけチームの外への透明性に大きく関わっています。アジャイルのチームは少人数で結束し、その中ではハイコンテクストな状態でコストの低いコミュニケーションができます。
しかし、この状態は外から見ると閉鎖的に見えかねないのです。「何をやっているかよく分からない」「付箋に何やら書いてペタペタ貼って遊んでいるのか」「ミーティングしているかと思えば笑い声が起きてるし」のような印象を持たれてしまう。これはチームにとってもよいことではありません。

そういう組織の人も含めてスクラムを理解してもらう責務がスクラムマスターにあるのはその通りなのですが、チームの立ち上がり時はまずはチーム内のことが重要で、チーム外への配慮はどうしても後回しになりがちです。時間をあまりかけずにチーム外にアピールする場としては、人が通る通路というのは最適です(念のためお断りしておくと、通路とはいえセキュリティエリア内で、その会社の関係者しか通らない場所でした)。

みなさんのチームでは

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私もこのやり方のよさに目覚めてしまい、それ以来、他のチームでも似たような方法をおすすめするようになりました。何もインセプションデッキに限らなくてもよいのです。例えば、リリースバーンダウンチャートをチームの外から見える場所に貼る、大まかなフィーチャーレベルの機能の進捗をわかるようにする、等。

ある程度の規模だったり、その組織にとって重要な開発というのは、直接のレポートラインの人以外(斜め上の偉い人達)も割と気にしているものです。チーム内だけに閉じて開発をしていると「隠されている」ような気がして、気に入らない。別途報告をしろ、とかめんどくさいことを言い出します。でもそういう方々には、情報をさりげなくオープンにすることで、結構安心してもらえるのです。

リモートワーク環境の場合

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このプラクティスの悩ましさは、リモートワーク環境ではとても難しいことです。
「自然に目に入ってくる会社の情報」というのが、リモートワーク環境下ではとても限られています。
何らかの情報ポータルを作ってそこで公開してもよいのですが、見る人はわざわざそのページにアクセスしなければならない。
所属する組織でみんなが見るポータルがあるよ、という方も、ちょっと考えてみてください。毎日そのページにアクセスしますか? 見たとしても、トップページのスクロールしなくてすむ最初のほうだけじゃないですか?(はい、すいません、私のことです)

逆に情報を掲載したい立場から考えてみると、その「全社トップページ」に何らかの情報を載せたい場合、結構な長さの承認ルートと時間がかかりませんか? 楽に自然に更新できて見せられる、というわけにはいかないのです。

正直に申し上げて、ここについては、私もよい解を持っているわけではありません。各自の環境で、何をすべきか/何ができるかを考えていくしかないと思います。ただ、チーム外への透明性を確保することで、「アジャイル/スクラムのことをよく知らないで文句言ってくる奴ら」を「いざという時に手助けしてくれる味方」にすることもできるということは、覚えておいていただきたいなと思います。

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